オンライン、オフライン問わず「マーケティング」をする上で欠かせない知識の一つが「ナーチャリング(顧客育成)」です。
ナーチャリングの知識が不足していたり、誤った理解をしていたりすると「顧客獲得の機会」を失ってしまう可能性もあります。
そこで今回は、ナーチャリングの基本知識から実際の活用方法・具体例までわかりやすく解説します。
この記事を通して「ナーチャリングとは何なのか」をしっかり理解できれば、今後のマーケティング活動の質もグンとアップするはずですよ。
ナーチャリングとは?
ナーチャリングとは「顧客育成」を意味するビジネス用語です。
「自社サービス/商品に興味を持った“見込み顧客”を、実際にサービス/商品利用してくれる“優良顧客”へ育成すること=ナーチャリング」と考えてもらうと理解しやすいと思います。
ナーチャリングの例
- 自社サービスの購買意欲を高めてもらうために、無料会員向けにメルマガを発信する
- 名前は知っているけど商品購入はしたことのない見込み顧客をターゲットにSNS運用で接触回数を増やす
- 自社サービスで解決できる「ユーザーの悩み」に関連した検索ワードで記事を作成しオウンドメディア運用をする
見込み顧客は「商品購入やリピーター」になって初めて会社へ利益をもたらしてくれます。だからこそ、見込み顧客を「優良顧客」にするナーチャリングが重要なのです
リードナーチャリングとリードジェネレーションの違い
補足として、ナーチャリングの説明と共に紹介されやすい「リードナーチャリング」と「リードジェネレーション」の違いを簡単に説明します。
両者の違いは至ってシンプル。ナーチャリングとジェネレーションをそれぞれ和訳すると以下になります。
ナーチャリング(Nuturing) | ジェネレーション(Generation) |
育成 | 創造 |
つまり、リードナーチャリングは見込み顧客の“育成”、リードジェネレーションは見込み顧客の“獲得”という違いがあるということです。
ナーチャリングが重要だと言われる5つの理由
ではなぜ、マーケティングには「ナーチャリングが重要だ」と言われているのでしょうか。なんだか難しそうだし、やらなくて良いのであればやりたくない人も多いはず。
とはいえ、ナーチャリングが昨今のマーケティングにおいて非常に重要な要素であることに変わりありません。次は「ナーチャリングが重要だと言われる5つの理由」を一緒に確認していきましょう。
5つの理由
- 見込み顧客を「優良顧客」へ育てることができるから
- 購買までの検討期間が長期化してきたから
- 購買までの判断プロセスが複雑化してきたから
- 広告色・営業色の強いコンテンツを嫌う傾向にあるから
- 明確な購買意図を持っていない(関心が薄い)見込み顧客が増えたから
見込み顧客を「優良顧客」へ育てることができるから
1番の理由は見込み顧客を「実際に商品/サービス利用してくれる顧客」へ育てることができるからです。
例えばAという会社には見込み顧客が1万人いるとします。しかしA社はナーチャリングを適切に行わず実際に獲得できた顧客が10名だったとしたら大きな機会損失となってしまいますよね。
一方で、Bという会社があり見込み顧客が5000人であったとしても、ナーチャリングを適切に行い「1000人」を顧客として獲得できれば大きな利益へつながります。
「将来自社へ利益をもたらす可能性のある見込み顧客」を最大限活かすために「ナーチャリング」が必要不可欠ということですね。
購買までの検討期間が長期化してきたから
インターネットが普及したため、顧客側は「いつでもどこでも」商品/サービスに関する情報を調べられるようになりました。
その結果「いつでも情報が手に入るなら今じゃなくていいか」「もしかしたら他にいい商品があるかもしれないから比較をしてからにしよう」という具合に、検討期間が長期化してきています。
選択肢や商品/サービスに関する情報が増えた結果、顧客側は「別に急いで買わなくてもいいか」と思うようになってきたということです。
だからこそ、「なぜこの商品/サービスが良いのか」を適切に伝え、購買に至らせるためにナーチャリングが必要なのです。
購買までの判断プロセスが複雑化&多様化してきたから
顧客側は検索エンジンや雑誌だけでなく、TwitterやInstagram、YouTubeなどさまざまな情報媒体を介して情報収集をします。
TwitterやInstagram、YouTubeなどが普及する前までは、「商品を知る→情報収集(店員/社員から説明を受ける等)→購買」というシンプルな流れだったかもしれません。
しかし、現代ではSNSをはじめとした様々な情報媒体が普及しているため、
- YouTubeで商品レビュー動画を見てから買う人
- 各SNSでの口コミを確認する人
- 検索エンジンで気になるポイントを隈なく調べる人
- 知人から勧められて調べ初めて購入をする人
などなど、購入するか否かの判断プロセスが複雑化&多様化しています。適切な媒体を使い見込み顧客の取りこぼしを防ぐためにも「ナーチャリング」が必要になります。
広告色・営業色の強いコンテンツを嫌う傾向にあるから
現代人の特徴としてよく挙げられるのが「広告・営業色の強いコンテンツを嫌う」です。
広告色全開で「その場で即決してもらおう!」というコンテンツやサービス訴求は、今の時代に合わなくなってきたと言い換えることもできます。
逆に、SNS運用やオウンドメディア運用を通じて「まずは見込み顧客の悩みを解決して警戒心を薄れさせること」の重要度は年々増してきているといえます。
こうした「顧客が好むコンテンツの傾向の変化」もナーチャリングが重要な理由の一つになります。
明確な購買意図を持っていない(関心が薄い)見込み顧客が増えたから
見込み顧客と一口にいえども、「買う決意はある程度固まっている見込み顧客」もいれば、「なんとなく興味があったから調べただけの見込み顧客」もいます。
特に後者の場合、こちらから適切にアプローチをしないと優良顧客になってくれる可能性が下がり、機会損失に繋がってしまいます。ここで登場するのがナーチャリングです。
「なんとなく興味がある」を「この商品サービスを使いたい」に変える手段こそ「ナーチャリング」だからです。
ナーチャリングの3つのメリット【具体例付き】
ナーチャリングの必要性が分かったところで、次に気になるのが「ナーチャリングは企業にとってどんな良いことがあるか」ですよね。
ナーチャリングで得られる企業側のメリットは大きく分けて3つあります。
- 継続して商品/サービス利用してくれる顧客を増やせる
- 集客コストを削減できる
- 機会損失を防ぐことができる
ナーチャリングには顧客の品質面以外に「コスト面」でもメリットがあるので要チェックです。
継続して商品/サービス利用してくれる顧客を増やせる
ナーチャリングを通して見込み顧客を「自社商品/サービスのファン」にすることができれば、継続的な利益が期待できます。
1回だけ購入してリピートなしの顧客100人よりも、何回もリピート購入/利用してくれる顧客10人の方が長期目線では「売上への貢献度」が高くなります。
ナーチャリングをすることで質の高い「優良顧客」を自分たちの手で育てることができ、安定収益に繋げられるということです。
集客コストを削減できる
新規顧客の獲得とは異なり、ナーチャリングはすでに興味がある「見込み顧客」にアプローチするため「集客コスト(顧客獲得単価/CPA)」を削減できます。
新規顧客の獲得 | 見込み顧客の獲得 | |
利用媒体 | 広告の出稿、CMの放映など | メルマガ、SNS、セミナー、オウンドメディアなど |
コスト感 | 高い | 安い |
集客数 | 多い | 普通 |
購買へ繋がる期待値 | 低い | 高い |
新規顧客獲得のための施策だけでは「購買へ繋がる可能性」が低いため、膨大な集客コストがかかってしまいます。
しかし、ナーチャリングと新規顧客獲得を組み合わせることで、「数」と「質」両方を狙える仕組みを作ること」ができ、集客コストも削減可能になりますよね。
集客コストを減らすことができれば「利益率」も上がりますし、商品/サービスの品質向上にコストをかけることもできますよ。
機会損失を防ぐことができる
ナーチャリングを行うことで「将来的に優良顧客になる可能性のある人」を取りこぼしてしまうリスクを低減させることができます。
1番もったいないのが、コストをかけて集客したのにナーチャリング(顧客育成)する体制が整っておらず優良顧客は獲得できず…という状況。
コストの払い損で終わることは絶対避けたいはず。コストの払い損の可能性を減らせるのもナーチャリングの大きなメリットです。
ナーチャリングの主な手法はこの5つを抑えよう!
では、具体的なナーチャリング手法にはどんなものがあるのでしょうか。特に「マーケティング部門」で働いている人であれば必ず押さえておきたいナーチャリング手法を5つ紹介します。
- メルマガ
- オウンドメディア運営
- SNS運用(Twitter、Instagram、YouTubeなど)
- セミナーや展示会
- インサイドセールス
特に、オウンドメディア運営やSNS運用は現代マーケティングには欠かせない手法のひとつ。具体的にどんな戦略があるのか確認しましょう。
メルマガ
工数も大きくかからず、見込み顧客へアプローチがしやすいのがメルマガです。
無料会員登録などでユーザーのメールアドレスは管理しているものの、有効活用できていない場合はメルマガを使ったナーチャリングも選択肢の一つとなります。
メルマガでナーチャリングをするメリットは「一斉に多くの見込み顧客へアプローチできること」です。一方でメルマガには抵抗があるユーザーも少なくないため「広告っぽさ、胡散臭さ」を抑えたメルマガを作成する必要があります。
例:SEOコンサルを行っている会社が見込み顧客へアプローチするメルマガを作成する場合
見込み顧客ニーズ:SEOの知識は吸収したいけどコンサルを契約するほどではないと考えている
メルマガの方針:ステップメールで「SEO対策の基本知識」から徐々に専門的な話をメールで読ませて「SEO対策には工数が多くかかること、工数削減のためにはSEOコンサルを契約して最新情報を追うのが得策であること」を伝える。
オウンドメディア運営
自社商品につながりそうな検索キーワードなどを調べて、該当キーワードを狙った記事を作成し集客する「オウンドメディア運営」も手段の一つ。
オウンドメディア運営のメリットは「自社サービスとニーズがマッチしていそうな見込み顧客」を集められる点です。
たとえば、「記事外注サービス」を提供している会社があるとします。
そしてオウンドメディアで「記事外注 おすすめ」「記事制作 どこがいい」「SEOやり方」などのキーワードで記事を作り、検索エンジンから流入が得られれば、自分達が求めている顧客像に近いユーザーを集めることができますよね。
ただし、検索キーワード選定やサイト設計、SEO施策の考案、実行などかなり大きなリソースが要求される点は注意が必要です。
SNS運用(Twitter、Instagram、YouTubeなど)
老若男女問わず「スマホユーザー」が増えてきたため「SNS運用」を通じて顧客獲得/育成をする企業も増えてきました。
(参照:令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査)
ただし、闇雲にSNS運用でナーチャリングをしようとすると「失敗に終わり工数負け…」という結末になってしまいます。
SNS運用で顧客育成をしようと考えているのであれば、自社商品/サービスのターゲット層はどこなのか、どのSNSと相性が良さそうかなど媒体の特徴を分析することが最重要項目です。
また、SNS運用は品質を担保しつつ「継続し続けること」が成功の秘訣。そのため運用リソースの確保は必ずするべきです。
片手間で担当者を決めてSNS運用をしてみよう!というのはおすすめしません。
セミナーや展示会
昔ながらの手法ですが、対面(オンラインも含む)で商品訴求や教育ができるのがセミナーや展示会のいいところです。
- 開催場所
- コンセプト
- 議題
- 集客方法
- 参加費
- 特典の有無
など決めるべきことも多いですが、オンライン上でアプローチがしづらい60代以上の年代層がターゲットの場合には有効なナーチャリング手法の一つといえます。
インサイドセールス
相手先(見込み顧客)に直接訪問せず、メールや電話、オンラインMTGなどを用いて営業することをインサイドセールスといいます。
インサイドセールスはシンプルかつ昔から使われている手法なだけあり「実行」することは簡単なのですが、セールスが敬遠されがちな現代においては工夫が求められる手法でもあります。
いかに不信感を抱かせずに営業するか、セールス色を減らすためにはどんなアプローチ方法がいいのかを「トライアンドエラー」を繰り返しながら学んでいきましょう。
ポイントとしては「最初から商品/サービスを売ろうとしないこと」です。複数回コンタクトをとり、見込み顧客に「この人は私の話・悩みを聞いてくれるひとなんだ」と思わせることが重要です。
ナーチャリングを成功させるためのコツ・ポイント
ナーチャリングは闇雲に行えば成功するほど甘くありません。むしろノープランでナーチャリングを始めるのは大きなリスクともいえます。
- 顧客のニーズを徹底的に分析する
- 自社サービス・商品のメリット・デメリットを明確にする
- トライアンドエラーを繰り返し「成功体験」を貯める
- 目的に対して適切な手法(媒体)を活用する
そこでこの章では、知っておいて損はない「ナーチャリングを成功させるためコツ・ポイント」を4つ解説します。
顧客のニーズを徹底的に分析する
ナーチャリングが成功するか失敗するかを大きく分けるのが「顧客のニーズをどれだけ正確に把握できているか」です。
- 顧客が抱えている悩みは何か
- 自社サービス・商品はどのようにして悩みを解決できるのか
- なぜ他社製品ではなく自社製品を買うべきなのか
- 顧客が購入に至っていない原因はどこになるのか
- 見込み顧客は男性が多いのか、女性が多いのか etc…
見込み顧客のニーズを徹底的に深堀する必要があります。ただ「顧客のニーズってどう分析したら良いかわからない方」もいると思うので、顧客ニーズ分析におすすめの方法も紹介しておきます。
方法は意外と簡単で「5W1H」で顧客の利用シーンを考えてみるというシンプルなものです。
- Who→誰が
- When→いつ
- Where→どこで
- What→何を
- Why→なぜ
- How→どのように
例えば、「記事作成の代行サービス」を行なっている会社の場合、顧客のニーズは以下のように考えることができます。
- Who→サイト運営者、広告担当者
- When→自社コンテンツを作成しようと施策を練っているとき
- Where→オフィス
- What→記事の外注サービスを探している
- Why→自社内の工数削減と品質の担保をするため、コンテンツ制作専門の人員が不足しているから
- How→検索エンジンやSNSを使って「高品質な記事」を作成できて、コスト感も高過ぎないところを探している。
上記例のように「私たちの商品が刺さる顧客ニーズにはどんなものがあるか」を深堀することがナーチャリング成功のポイントです。
自社サービス・商品のメリット・デメリットを明確にする
見込み顧客に商品、サービスについて知ってもらうためには、誰よりも「自分達」が商品・サービスに詳しくなければいけません。
顧客はメリットだけを紹介されても購買には至りづらく、メリット、デメリット、独自性、希少性などを加味したうえで「購入」をします。
だからこそ、自社サービスのメリットは何か、逆に改善すべきデメリットは何か、デメリットを対処する方法はどんなことが考えられるか…などを理解しておき、ナーチャリングを通して顧客に伝えることが重要です。
トライアンドエラーを繰り返し「成功体験」を貯める
ナーチャリングをしていくうえで、百発百中で施策が成功することはまずありません。
大切なのは「なぜこの施策は成功したのか/失敗してしまったのか」を分析し知見を深めることです。
ナーチャリングを行い、効果検証をしっかりすることで「成功する確率」を高めることができますよ。
目的・ユーザー属性に対して適切な手法(媒体)を活用する
最後のポイントは目的・ユーザー属性に合った手法を活用することです。
たとえば50代から60代で資産額も大きい人たちへのアプローチであれば、SNSではなくメルマガやセミナーでのアプローチが有効かもしれません。
逆に20代、30代がターゲット層なのであれば、メルマガ、セミナーより「SNSを活用したナーチャリング」のほうが親和性は高いはず。
このように、最初のコツで導き出した「ユーザーニーズ」に対して、
- どの媒体でのアプローチが最適なのか
- 文量は長めがいいのか、短めがいいのか
- 動画で伝えるのか、文字で伝えるのか
など「どの手段でどう伝えるのが最適なのか」をじっくり考えてみましょう。
まとめ
今回はマーケティングに欠かせない知識「ナーチャリングの基礎から実践方法&成功のコツ」を解説しました。
自社サービスを訴求するためには、どんなニーズに対して「どんななチャリング手法」でアプローチすべきか見当はつきましたか?
何事も最初は失敗がつきものです、むしろ失敗がなければ大きな成功も得られませんからね。記事で紹介した知識を実践していくなかで得られる「経験」は今後の売上アップにも貢献してくれるはずです。