マーケティングという言葉は有名で知らない人はいないと思いますが、「マーケティングの意味」をしっかり理解できている人は少ないのではないでしょうか。
たしかに、なんとなく理解はできていても「いざ説明してみて」と言われると困ってしまう言葉って結構多いですよね。
しかし、その「あいまい」な状態でいるのは大きな機会損失を生んでいるかもしれません。この記事では、ビジネスで収益確保するための重要要素「マーケティングとは何なのか」をわかりやすく解説します。
マーケティングとは?
ひとことで言うと、マーケティングとは「商品が売れる仕組みをつくること」です。マーケティングと聞くと複雑な戦略を練り、分析をし、商品を売ることというイメージがあるかもしれませんが、仕組みは至ってシンプル。
顧客像(ターゲット)を決め、顧客との接触経路を作り、売る。拍子抜けしてしまうかもしれませんが、ただそれだけです。
自社のオウンドメディアを運営して、サービスを読者に売るのもマーケティングですし、地域の八百屋さんが常連さんに野菜を売ることもマーケティングの一環です。
ただ、これからマーケティングを学ぶ上で覚えておきたいことが2つあります。
- 「マーケティングの意味」は時代背景や、消費者心理の変化とともに変化する
- マーケティングの根本的な考え方・手法は変わらない
一見矛盾を感じるかもしれませんが、流行りのマーケティング手法は変わっても、マーケティングの「本質」は変わらないと考えていただければ問題ありません。
この記事では、上記2点を加味して「マーケティング」について解説していきます。
マーケティングの意味・定義
マーケティングの定義・意味として有名なものが3つあります。一つ目はアメリカの経営学者「コトラー」によって定義づけられたもの、2つ目はマネジメントの発明者とも言われる「ドラッガー」によるもの、もう一つは「日本マーケティング協会」によって定義づけられたものです。
古くから使われている定義は、そのものごとの「本質」を知るために役立つので、参考までに確認しておきましょう。
コトラーの「マーケティング」の定義
Marketing is about identifying and meeting human and social needs.
『マーケティングとは社会活動のプロセスである。その中で個人やグループは、価値ある製品やサービスを作り出し、提供し、他社と自由に交換することによって、必要なものや欲するものを手に入れる』
ドラッガーの「マーケティング」の定義
The aim of marketing is to know and understand the customer so well the product or service fits him and sells itself.
『マーケティングの目的はセリング(単純販売活動)を必要なくすることである』
日本マーケティング協会の「マーケティング」の定義
マーケティングとは、企業および他の組織1)がグローバルな視野2)に立ち、顧客3)との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動4)である。
日本マーケティング協会 1990年
1)教育・医療・行政などの機関、団体などを含む。
2)国内外の社会、文化、自然環境の重視。
3)一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む。
4)組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう。
(公益社団法人 日本マーケティング協会「マーケティングの定義」より引用)
小難しい書かれ方をしていますが、まとめると「マーケティング=顧客にサービス・商品を売るための仕組みづくり」と言えそうですね。
では、マーケティングにはどんな種類があるのでしょうか。
マーケティングの種類にはどんなものがある?
必ず押さえておきたいマーケティングの種類は以下4つです。細分化すればもっと多くのマーケティングの種類がありますが、基本的にこの4つを押さえておけば現段階では問題ありません。
- リアルマーケティング
- デジタルマーケティング
- WEBマーケティング
- SNSマーケティング
それでは、各マーケティングの概要、具体例そしてメリット・デメリットを解説します。
リアルマーケティング
リアルマーケティングとは、「リアル(現場・対面)」で行われるマーケティングのこと。マーケティングの歴史として最も古くから用いられています。
リアルマーケティングの具体例
- 展示会
- 訪問販売
- 商品サンプルの配布
- ビラ配り・ティッシュ配り
- 商品体験イベントの開催
- セミナーの開催 など
展示会はコロナ禍でリアルな接触ができないためオンラインなど多様な形となり、一時は開催数・来場者数が大幅に減少したものの、現在では再び盛り上がりを見せ始めています。
展示会については「展示会マーケティングの基本について|具体的な方法や準備すべき内容について解説」をご覧ください。
リアルマーケティングのメリット
リアルマーケティングのメリットは、見込み顧客と実際に話すことで「より具体的なニーズ」を調査できる点です。「この人は何で悩んでいるのか、その悩みを解決するためにはどんな商品・サービスが良いのか」を深く分析ができるため、よりニーズに合った商品・サービスの企画や提案に役立ちます。
リアルマーケティングのデメリット
デメリットは、接触できる顧客数に限りがある点です。リアルマーケティングで顧客を増やす場合、「多くの人手」が必要になります。社員数にも限りがあることを考えると「量」の観点では弱くなってしまいます。
ただ、不動産購入や保険、投資、車の購入など「大きなお金」が必要になる買い物に対しては、リアルマーケティングの方がより安心感がありますよね。
こうした「人間味を感じさせられる点」もリアルマーケティングの特徴です。
デジタルマーケティング
デジタルマーケティングは「オンライン上」で行うマーケティング全般を指します。後述のWebマーケティングとSNSマーケティングも広義では「デジタルマーケティング」と言えます。
デジタルマーケティングの具体例としては以下が挙げられます。ネット環境が整い、スマホやSNSが普及した現代においては聞き覚えのあるものが多いのではないでしょうか。
デジタルマーケティングの具体例
- インターネット広告の配信
- SEO集客
- オウンドメディア運営
- SNS運営
- 動画投稿サイトを活用した集客
- メルマガ配信
- アプリ開発
- オンラインアンケートの実施
また、デジタルマーケティングの特徴として、顧客データを管理・分析しやすい点があげられます。ユーザー行動を数値化し、効率的に改善策が打てるのはデジタルマーケティングの魅力ともいえますね。
デジタルマーケティングのメリット
メリットとしては、物理的な場所を取る必要がない、リアルマーケティングと比べてより多くの顧客へのアプローチが可能、コンテンツを一度作ってしまえば工数があまりかからないなどが挙げられます。
また、売りたいサービス、商品によってマーケティングに使うツール(動画、SNS、記事コンテンツなど)を柔軟に使い分けできる点も大きなメリットの一つ。
デジタルマーケティングのデメリット
デメリットは、細かい顧客ニーズに対応しづらい点です。デジタルマーケティングでは、最大多数のニーズに合わせたコンテンツ作りが基本になるため、個人レベルの小さなニーズに対応することが難しいです。
そのため、デジタルマーケティングにおいては「どのようにして細かいニーズを拾うか」が成功の鍵になります。
Webマーケティング
デジタルマーケティングの中でも「Web上での集客・販売」に特化したのがWebマーケティングです。具体的には、Webサイトの運営、広告用ページの配信・運用、SEOによる集客などがWebマーケティングに分類されます。
自社で開催しているウェビナーなどもWebマーケティングの一種ですね。より多くの見込み顧客を「Web上」で集めようとするのがWebマーケティングの特徴です。
Webマーケティングのメリット
Webマーケティングのメリットは実際に対面でセールスをかける手間・暇がかからない点です。Webマーケティングでは読者が知りたい情報をコンテンツ化し、集客を行うため人が直接営業をかける必要がありません。
もちろん、web集客後にメールや電話でセールスをかける場合もありますが、「すでに興味を持っている見込み顧客」へのアプローチになるので、全くの新規顧客と比べ営業のしやすさは格段に上がります。
Webマーケティングのデメリット
デメリットとしては、コンテンツやサービスを展開する媒体の「専門知識」が必要になる点です
例えば、ネット用広告を配信して集客するには以下の知識が必須になります。
- テキスト作成(コピーライティングの技術)
- デザイン作成
- 分析をするために必要な設定(タグの埋め込みなど)
- 配信設定
- 配信結果の分析(データ分析)
また、仮にSEO集客をしたい場合には「google検索エンジンの仕組み」「高品質コンテンツの定義」「タイトルやディスクリプション、構造化データ、内部リンク・被リンク」などなど…SEOに欠かせない用語の理解が必要です。
スキルがある場合は、非常に費用対効果も高くなりますが、逆にスキル不足だと工数ばかりが嵩んでしまうのもWebマーケティングの特徴といえるでしょう。
SNSマーケティング
近年、特に注目を集めているのがデジタルマーケティングの一種「SNSマーケティング」です。SNSマーケティングとは大手SNSの「ツイッター、インスタグラム、TikTok、フェイスブック」などを利用して見込み顧客を集める手法です。
最大の特徴は、「個人」でも参入がしやすい点ではないでしょうか。インフルエンサーと呼ばれる人たちが良い例ですね。
SNSは手軽に始められるため「コンセプト設計」がしっかりしていて、運用を継続できる体制作りができれば平等に集客チャンスがあるのが魅力です。
SNSマーケティングのメリット
参入障壁が低く、自社の「ファン」を作りやすい点が1番のメリットです。SNSマーケティングでは発信内容や発信者の性格・コンセプトに対して「ファン(優良顧客)」がつきます。
ですから、ネームバリューがあまりない中小企業や個人にもチャンスがあります。ただし、SNSごとにユーザーの使用目的や年齢・性別が大きく異なる点は覚えておきましょう。
テキストや図解メインで発信するなら「ツイッター」、動画などの視覚情報に訴えたい、ユーザーとの相互交流を重視したい場合は「インスタグラム」がおすすめです。
SNSマーケティングのデメリット
SNSマーケティングのデメリットは、運用に工数が多くかかる点と運用ノウハウを会得するまで成果があがりづらい点です。
SNSマーケティングの成功するためには「継続」が必要不可欠。毎日更新や企画を考える工数が確保できない場合は避けた方が無難です。
また、小手先の運用テクニック重視で「コンセプト設計(どんな悩みを抱えている人にどんな情報・価値を付与するのか)」が曖昧なまま運用してしまうと収益化が望めなくなってしまうので注意しましょう。
有名なマーケティング分析の方法【今日から使える】
次は、マーケティングに欠かせない分析の手法を目的別に解説します。これから紹介する分析方法(フレームワーク)を使うことで、マーケティングを効果的かつ効率的に進められるようになります。
マーケティング施策の大枠を決める目的に適した分析方法
まずは、マーケティング施策の大枠を決めるのに役立つ分析方法を3つ紹介します。
- 3C分析
- 5フォース分析
- SWOT分析
小難しい横文字の名前が付けられていますが、どのフレームワークも使い方は至ってシンプルかつ簡単なので気負いせず確認していきましょう。
3C分析
マーケティング分析の王道とも言えるのが「3C分析」。
3Cとは以下3単語の頭文字をとったものです。
- Customer:市場・顧客
- Competitor:競合
- Company:自社
各項目で深堀すべき要素は以下の通り。各項目で調査すべき内容を調べればマーケティング戦略が立てやすくなるという仕組みです。
- Customer:市場・顧客→年齢、性別、年収、抱えている悩み・ニーズ
- Competitor:競合→市場シェア、業界での評判、強み・弱み、独自性
- Company:自社→強み・弱み、業界での評判、市場シェア、他社との差別化要因
マーケティングを始める初期段階で用いられることが多いフレームワークです。特にcustomerの項目をしっかりと分析することが成功の鍵を握っています。
5フォース分析
5フォース分析は、フォース(競争要因)を洗い出し自社が持っている強みをどう活かすかを分析するフレームワークです。
5フォースは以下の5要素があります。
- 業界内での競争
- 業界への新規参入者
- 代替品の存在
- 買い手(顧客)の交渉力
- 売り手(サプライヤー)の交渉
特に、新規事業を進めるうえで役に立つフレームワークといえます。なぜなら「新規参入者」を分析することで参入障壁の高さや、新規で収益を上げるための条件を抽出できるからです。
「この事業を立ち上げて勝ち目はあるのか」を判断する際は5フォース分析を取り入れてみましょう。
SWOT分析
SWOT分析はマーケティング事業の現状を分析するためのフレームワークです。SWOTは以下の英単語の頭文字をとって付けられています。
- Strength(強み):自社や自社商品の長所や得意とするところ。内部環境のプラス要素。
- Weakness(弱み):自社や自社商品の短所や苦手とするところ。悪影響を及ぼすと考えられる内部環境のマイナス要素。
- Opportunity(機会):社会や市場の変化などにより、自社や自社商品にとってプラスに働く外部環境のプラス要素。
- Threat(脅威):社会や市場の変化などにより、自社や自社商品に悪影響を及ぼすと考えられる外部環境のマイナス要素。
今進めている事業の改善点を見つける目的でも、新規事業の勝ち筋を見極める目的でも活用することができます。
また、負の要因(弱み・脅威)を分析できるので、マイナス面への対応策を考えるのにも役立ちますね。
マーケティング施策の具体性を高める目的に適した分析方法
続いては、具体的な施策を考えるのに役立つフレームワークの紹介です。前述の3つの分析よりもさらに「顧客理解」にフォーカスした分析方法なので「大枠を3C分析で決める→具体性を4C分析で詰める」というように併用することをおすすめします。
4C分析
4C分析は「顧客」に焦点を当てた分析手法。4Cは以下の頭文字をとって付けられています。
- 顧客価値(Customer Value)
- 顧客のコスト(Cost)
- 顧客にとっての利便性(Convenience)
- 顧客とのコミュニケーション(Communication)
顧客に対して、どんな価値を付与できるのか、顧客はその価値に対してどれくらいのコストをかけてくれるのか、顧客が購入しやすいような商流は確保できているか、どのようにして顧客と接点をもつのかを分析するのが4C分析です。
特に「顧客価値(Customer Value)」が十分でないと、商品・サービスは売れません。本当に見込み顧客にとって価値のある商品・サービスなのか見直すきっかけにもなる分析手法といえます。
4P分析
4P分析は顧客ではなく「商品・サービスそのもの」にフォーカスした分析手法です。
- Product:どのような製品・サービスを提供するのか
- Price:その製品・サービスをいくらで提供するのか、どのようなチャージ方法か
- Place(Channel):その製品・サービスをどのように提供するのか
- Promotion:その製品・サービスをどのように販促するのか
商品設計から販売までの流れを分析できるため、新規商品の開発時などによく用いられます。特に昨今では「Promotion」の方法で売上は大きく変化しますから、力をいれて分析しておきたいところ。
販促方法を考えるコツは、「どんな人に売ろうとしているのか」「気軽に意思決定できる商品か、それとも検討を重ねて決断する大きな買い物なのか」を考えることです。
気軽に買えるものならECサイトのような形態が適していますし、自動車やマイホーム、高額サービスの場合、安心感を与えるためにリアルマーケティングと組み合わせた方が良いと予想がつきますよね。
STP分析
STP分析は「自社」の立ち位置を定めるために有効な分析フレームワークです。
- Segmentation→市場人口、地理的要因、社会心理的要因、顧客行動の傾向などを分析
- Target→自社サービス・商品を販売するのに適している市場はどこかを見定める
- Position→品質重視なのか価格重視なのか自社のポジション(戦い方)を決める
特に、競合他社が多い市場を狙っている場合は、STP分析を行い「勝てる市場探し」と「勝ち方」を探るのがよいでしょう。
ファネル分析
ファネル分析は、簡単にいうと「顧客がどのような手順で購入に至るのか」を分析するための手法です。いくら商品設計がしっかりしていても、適切な市場を選んで販売をしていても「顧客の購入プロセス」を知らないと効率的なマーケティングは実現できません。
どのように認知させるのか。どうやって興味を惹くのかなど「顧客行動のプロセス」ごとに戦略を練ることで、マーケティングを成功へと導くのがファネル分析です。
以上で有名なマーケティング分析の手法紹介は終了です。気になったフレームワークを使って自社製品・サービスを分析してみると理解度がグンとアップしますよ。
効果的なマーケティング施策の考え方
マーケティングをする上で最も重要なことは何かと聞かれれば、あなたならなんと答えるでしょうか?販促経路でしょうか、価格設定でしょうか。
色々意見はあるかと思いますが、「顧客のニーズ理解」こそ、最重要項目だと考えられます。
なぜなら、どれだけ優秀な営業を雇い、商流を最適化し、販促プロモーションを打ったとしても「そもそも顧客が求めていない商品」の場合、売れないからです。
今、目の前に喉が渇いている人がいて、その人に「クッキーを買いませんか?このクッキーは完全栄養食でさらに値段もお手軽!1食あたり100円でお財布にも優しい。今なら初回限定で10食分を無料で追加できます!」と熱弁しても売れませんよね。
だって、喉が渇いている人がほしいのは「ただの水」ですから。ここで立ち止まって考えたい点が一つあります。この目の前にいる「喉が渇いた人」がほしいのは水なのでしょうか?
もっと、深く分析すれば「喉が潤って満足した自分」こそ、この人が最も欲しているものですよね。
このように「顧客が悩んでいること」「悩みの解決策(商品・サービス)」「悩みを解決した未来の顧客像」の3点を意識してマーケティング施策を考えることで、円滑に事業が進められるようになります。
まとめ
今回は、マーケティングの意味・定義から具体的な分析手法、そして施策を成功させるためのコツを紹介しました。
記事を読むと「わかったつもり」になってしまいますが、知識は実践して初めて役に立ちます。まずは気になった分析手法で自社サービスを分析して、「使える知識」を身につけていきましょう。