引越し業者へのチップは渡さないでOK
引越しを業者に依頼する際、「業者へチップ(心付け・ご祝儀)を渡した方がいい?」と疑問を持つことがあるでしょう。結論から言えば、業者へチップを渡す必要はありません。というのも、チップと同じ意味合いを持つサービス料金が、引越し料金の中に含まれているからです。
「チップを渡さないと業者は嫌な気持ちになるのでは?」と気にする方もいますが、そもそもチップを渡すことは義務ではありません。また前述の通り、チップにあたるサービス料金も含んだ金額を支払っているため、チップを渡さなかったからといって、業者側の心証が悪くことはないのです。
その証拠に、引越し業者が行った「引越し業者に心付けや差し入れを渡したか?」という質問に対するアンケート結果は、以下のようになりました。
20代 | 30代 | 40代 | 50代 | 60代以上 | |
渡していない | 57% | 47% | 43% | 43% | 45% |
差し入れを渡した | 33% | 33% | 31% | 30% | 24% |
心づけを渡した | 8% | 14% | 17% | 19% | 17% |
差し入れ・心づけどちらも渡した | 2% | 6% | 8% | 8% | 14% |
引用:引越し侍公式HP
どの年代も、半数近くが「渡していない」と答えています。特に、進学や就職のために単身で引越しすることが多い20代は、心付けや差し入れを渡している人が少ないことが分かります。
作業員の働きぶりや気遣いへの感謝の気持ちとして、チップを渡すのはOKです。作業員としても、自身の働きが認められれば嬉しいはずでしょう。
引越し業者も心付けは必要なしが主流
大手の引越し業者でも、心付け(チップ・ご祝儀)を渡す必要はないとの見解が主流です。実際に、「アート引越しセンター」「サカイ引越センター」「アーク引越センター」の公式サイトでは、以下のように心付けに関する姿勢を明記しています。
Q.引越スタッフの方に、謝礼や食事の用意をした方がよいのでしょうか?
A.当社引越作業スタッフへの心遣いは必要ございません。引用:アート引越センター
引越しスタッフの方に、心付けや食事を用意した方がいいのですか?
当社のスタッフにはそのような心遣いはご不要です。引用:サカイ引越センター
Q.作業スタッフに心づけ(チップ)は必要ですか?
A.アーク引越しセンターでは心づけ拝辞をしております。つねによいサービスをご提供いたしますのでご安心ください。引用:アーク引越センター
このように、大手を含めた多くの引越し業者で、心付けはもらわないようにしていることが伺えます。
業者によっては心付けに対して厳しく指導しているところもあるため、気遣いのつもりで渡しても、かえって作業員の負担となることも。引越しの依頼時に、公式サイトで業者の姿勢を確認するのがおすすめです。
心付けの相場はいくらが目安
心付けを渡すと決めたのなら、次に気になるのは相場です。引越しのように地域性が関係する物事の相場を図るには、都道府県ごとでチェックするのがいいでしょう。
引越し業者が行った調査によると、都道府県別の心付け金額のトップ3とワースト3は以下の通りです。
心付け金額トップ3 | 心付け金額ワースト3 |
1位:徳島県(4,100円) | 1位:青森県(500円) |
2位:岡山県(3,582円) | 2位:福井県(600円) |
3位:兵庫県(3,328円) | 3位:富山県(710円) |
引用:引越し侍公式サイト
なお、心付け金額の全国平均は2,296円で、トップの3県は全国平均に1,000円以上のプラスです。ワーストの3県はどこも1,000円以下で、最高額の徳島県と比べて3,000円以上の差がつきました。
この結果をまとめると、心付けの費用の目安は
目安費用:500円~4,100円
と言えるでしょう。とはいえ、「徳島での引越しだから4,100円くらいを用意しないと!」などと慌てる必要はありません。もともと心付けの相場などあってないようなものなので、結局はいくらでもOKなのです。飲み物程度の金額であっても、まったく問題ありません。
通常、チップの相場は「料金の10~15%程度」であると覚えておきましょう。
チップを渡すタイミングはいつ?
引越し業者にチップを渡すタイミングとしては、「作業前」「作業後」の2パターンがあります。それぞれにメリットがあるため、どちらにするかは自身の判断でOKです。それぞれのメリットを以下にまとめました。
作業前にチップを渡すメリット | 作業後にチップを渡すメリット |
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チップとして何を渡すかにもよりますが、お金やギフトカードなどを渡す際は作業前、飲み物やお菓子などを渡す際は作業後にするのがおすすめです。
引越し業者への心付けの渡し方
引越し業者への心付け(チップ)は、ポチ袋に入れて作業員に渡すのがマナーです。その際、人数分のポチ袋を用意して、一人ずつチップを分けておきましょう。
渡し方は「一人ずつ別々に渡す」か「リーダーにまとめて渡す」かのどちらかで、当日の作業員の動きに合わせます。「よろしくお願いします」や「ありがとうございました」といった言葉を添えて、チップを渡してください。
心付けを入れるポチ袋は、「シンプルなデザインのもの」か「熨斗入りのもの」を選べば問題ありません。表書きに「御礼」と書くと丁寧ですが、何も書かなくても大丈夫です。
中にお金(お札)を入れる場合は三つ折りにします。複数枚のお札を入れる際には、1枚ずつ三つ折りにした後、重ねてポチ袋に入れるようにしましょう。
全員分の心付けをひとまとめにして渡すと不公平な分配になることがあるため、できるだけ個別に渡すようにしましょう。
差し入れをしたい場合は飲み物がベスト
金銭的な心付けではなく差し入れをしたい場合は、「飲み物」を渡すのがベストです。引越しの作業は汗をかくので、のどが渇きますし、時期によっては熱中症を起こすこともあります。飲み物を差し入れれば、それらの予防になるでしょう。
ただし、どんな飲み物でも良いわけではありません。以下の点を意識して、何を渡すか選んでください。
- コーヒー、ジュースなど味の好みが分かれそうなものは避ける
- 長時間の作業で飲み物はぬるくなるため、常温でも飲みやすいものにする
- 飲みきれなくても持ち帰れるため、ふた付きのものにする
上記のポイントを総合すると、ペットボトルのお茶やミネラルウォーターが無難です。真夏の暑い時期であれば、スポーツドリンクを差し入れるのもいいでしょう。
引越し現場近くの飲食店に食べに行く人や弁当を持参する人もいるため、弁当の差し入れは避けましょう。
また、以下のような差し入れも、引越しの作業においては避けるべきです。
- 甘い飲み物
- お菓子
- パン
「疲れたときは甘いものがいいのでは?」と思うかもしれませんが、作業で汗をかいた状態で甘いものを飲んだり食べたりすると、余計にのどが渇いてしまいます。パンも口の中の水分を吸収してしまうため、同様に避けましょう。汗をたくさんかいたときは、糖分より水分の補給が第一です。
まとめ
引越し料金にはすでにチップにあたる金額が含まれているため、作業員にチップを渡すことは義務ではありません。引越し業者の間では受け取らないことが主流になっていますし、渡すことが作業員の負担になってしまうケースもあります。
しかし、チップとはもともと、感謝やねぎらいの気持ちを伝えるためのものです。当日の作業員の働きぶりや気遣いに感じ入り、心付けや差し入れを渡したいと思うことは悪いことではありません。余裕があるのなら、チップを作業員に渡してあげてください。
ただし、チップを渡す際は独りよがりにならないよう、「チップに対する引越し業者の姿勢はどうであるか」「作業員に迷惑にならないか」などの確認は忘れないようにしましょう。